于仁泰(ロニー・ユー)監督インタビュー 

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―― 忠義という観点で言えば、中国の歴史上には岳飛をはじめとして、他にも数多くの人物や題材があるわけですが、その中でどうして楊家将を選ばれたのでしょう?

以前、李連杰(ジェット・リー)が『SPIRIT』(原題:霍元甲)を撮りたいと訪ねてきた時、僕はまず、霍元甲は題材として古すぎるし、何度も映画化されていて、今さら人々を感動させられる作品にはならないと考えました。だから、何故この映画を作りたいのかと訊ねたんです。するとジェットは、「僕はこの企画を6年間も温めてきたが、まだ完成にはいたらない。6歳でカンフーを始めて、もう40歳を過ぎた。どうしても中国武術の精神を世界に伝えたいと思っているが、それには影響力の強い映画が最適なのだ」という。僕の答えは簡単なものでした。決して内容を複雑にしないこと、ひとりの武術家を描くからには、彼の物語だけ、彼がカンフーを通じてどう成長したかだけに焦点をしぼること、というものです。この辺は、ハリウッドの考え方と中国映画との違いでしょうね。
1本の映画を世界中で放映したいと思ったら、まず、脚本やストーリーはシンプルでなくてはなりません。主人公が求めるものと観客が求めるものを同じにする。そうすることで、観客がストーリーに入り込めるんです。人物を語るには、金・成功・失敗・面子などが関わってきますが、これらは世界共通です。世界共通の観点に焦点をあてるからこそ、観客がその映画を理解できるんです。
だから僕は、『SPIRIT』の脚本をそのように変更しました。今回の『忠烈楊家将』も同じことです。仁義や忠孝は大切だし、現代の若者たちにとっても大事なことです。でも、だからと言って、父親が息子を目の前に座らせて仁義忠孝とは何かを語るのではダメ。これでは誰も聞きません。プロデューサーの黄百鳴(レイモンド・ウォン)が『忠烈楊家将』の話を持ちかけてきた時、僕は素晴らしいと言いました。『SPIRIT』の後、ずっと探していた題材にようやく出会えたと思ったのです。こういう中国の伝統的な内容を題材にした作品は必ず世界に通用します。世界中の若者たちに、忠義と何か、孝行とは何かを伝えられると思いました。原作の「楊家将」は非常に長く、多くの物語が包括されていますが、忠孝や仁義の考え方は全てに共通しています。問題は、どうやって具体化するかです。どうすれば、観客がこの点を感じ取ってくれるのか。そこで、脚本家には、絶対に複雑にはしないで、単純なストーリーにしてくれるようにお願いしました。
孝行とは何か。孝行とは、自分を犠牲にすることです。そして愛です。父の子供への愛、兄弟同士の愛、母の子供への愛、両親の愛。ここを押えられれば、あとは単純です。父の楊業が敗れて両狼山に閉じ込められ、7人の若い息子たちは何ものをも顧みずに父の救出に向かう。彼らの犠牲的ともいえる行動は、まさに孝行の現れです。そして、父を連れ帰った先には母がいる。このようなストーリーは、必ず観客に気に入ってもらえます。何故なら、誰にでも必ず両親がいて、兄弟姉妹がいるわけです。劇中の子供たちの思いは、全ての人が理解できるはずなんです。アジアであろうと、欧米であろうと、観客はきっとこのストーリーに引き込まれるでしょう。これは、エンターテインメント映画が芸術作品と違う点です。于仁泰导演.jpg

 

―― 今回の『忠烈楊家将』と、今までに制作されてきた楊家将作品とでは、どういった点が違うと思われますか?重視した部分や撮影手法などでは、どこが違っていると?

変わらない部分もあります。仁義・孝行といった中国の伝統的な価値観を伝えようとしている点は同じです。違うのは、楊家将が独自の形に描かれている点です。彼らは極めてファッショナブルで、若々しくて、そしてクールです。ストーリーは感動的で、音響効果が素晴らしく、映像も実に美しい。この映画は、ネットでダウンロードして観てもその素晴らしさはわからない。絶対に映画館へ足を運んで「体感」しながら観てほしい。『SPIRIT』では出来なかったことが、『忠烈楊家将』では実現できています。楊家将には若くてクールなイケメンたちがいますからね。

―― この映画はアクション  映画でしょうか?それとも、任侠映画でしょうか?他に適当な表現があったら教えていただけませんか?

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『忠烈楊家将』は、『忠烈楊家将』という独自の映画であって、特別に何かに分類されるものではありません。独自のセンスを持っているわけですから、時代劇とか、任侠映画とか、戦争映画とかいうように、定義付けするのは無理な話です。ただ、見ごたえのある良い映画だ、ということです。分類など必要ない。僕は映画を撮り終えるたびに、観た人にこう尋ねることにしているんです。「余計なことは言わなくていい。ただ、面白かったか?」って。面白ければそれでいい。分析など必要ない。観客というのはもっと感覚的な人たちなんです。

―― スチールやポスターを見てまず感じるのは、出演者が実にクールで、服装もカッコいいということです。このカッコよさを撮影や編集でどう活かされたのでしょう?

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この映画は戦争を描いたものですから、いかにして観客を戦争の世界に連れて行くかが問題でした。『SPIRIT』はカンフー映画でしたから、動きのひとつひとつは決められたもので、観客もそう思って観ています。でも今回、僕が動きに関して求めたのは「本物であること」です。観客の皆さんには、兄弟7人が、自分や父親を守るために実際に戦っているのだと感じ、そして一緒に痛みを感じてほしかった。刀の動きからそんな痛みを実感してもらうために、編集では、型どおりの順序だった動きではなく、1の次が5、その次が7、続けて8という風に変則的にしました。重要なのは観客の心を掴むこと。この映画がカッコ良く見えるのは、それが「本物」だからです。

―― この映画には、広範囲を映した場面が多くみられます。こういう映像の撮影には数々の困難が伴うと思いますが、特に難しいのはどんな点ですか?

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 画の撮影にはあらゆる手法を用います。でも、馬上での戦いを撮影するのは本当に難しくて、馬が思うように動かないとか、風が強いとかいったことで、すぐに撮影が滞ります。だからこそ、あらゆる手段を駆使するわけです。ただ、やはり最も大事なのは事前の段取りですね。早め早めに準備をすること。例えば、馬にどう動いてほしいかを早めに決め、トレーナーに伝えてその為の訓練をしてもらう。3カ月もすれば、馬だって覚えてくれます。急に、来週撮影だから適当な馬を連れて来いっていったのでは、到底、思い通りにはなりません。
ですから、馬の登場する場面の撮影は非常に難しい。でも、この映画には馬上での戦闘場面が数多く出てきます。毎日500頭もの馬を使っていれば、様々な問題が起きます。その上、その一頭一頭に甲冑を着けるんですから。でも、馬は甲冑を着けると、重すぎてあまり動き回れなくなります。ですから、撮影では少し軽めの甲冑を使いました。それで馬たちも走れるようになったんです。騎手も数多く集め、彼らには緑の衣装を着てもらいました。こうすれば映像処理の際に消すこともできます。とにかく、ありとあらゆる手法を用いました。この映画では、本当に様々な思考をめぐらせましたね。

 

三大主役イーキン・チェン、ヴィック・チョウ、ウーズン独占インタビューは「Chinese STAR」2013年夏号に掲載

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