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第23回 富士ゼロックス株式会社代表取締役社長 山本忠人



コピー機・複合機・プリンターの大手製造販売会社である富士ゼロックスは、中国で自社回収したコピー機・プリンターなどの使用済商品やカートリッジを、自社工場で鉄系・アルミ系・レンズ・ガラス・銅系など64カテゴリーに徹底的に分解・分別し再資源化する、中国統合リサイクルシステムを構築した。今回は、富士ゼロックスの山本忠人社長にその際の苦労と工夫を聞くとともに、中国での社員教育についてや、社員流出における課題などをうかがった。


そこからは自社の努力だけでなく、中国で築いたパートナーとの協力関係もうかがい知り事ができた。



富士ゼロックスと富士フイルムの関係

――中国には年間何回ぐらい行きますか?


社長になってから行く機会が少なくなりましたが、その前は開発の現場をよく見に行きました。ゼロから始めて、全体の約8割を中国で生産するようになる過程では、月に1度ぐらいは行っていたのではないでしょうか。

でも中国は深曙V・東莞・北京・上海・蘇州といったピンポイントしか行っていません。


――カメラのフイルムとコピー機・複合機の分野とではかなり差があるかと思いますが、コピー機・複合機の分野に進出したきっかけはなんですか?


富士ゼロックスは、元々日本の富士写真フイルム(当時)とアメリカのゼロックス・コーポレーションが50%ずつ共同出資してできた会社なのです。従いまして、株主は富士写真フイルムとゼロックス・コーポレーションですが、2000年まで富士ゼロックスはインデペンデントカンパニーでした。それが2000年頃、ゼロックス・コーポレーションに経営上の問題が出てきまして、富士ゼロックスの株の25%を富士写真フイルムに譲渡したのです。


その結果、富士写真フイルムのシェアが75%、ゼロックス・コーポレーションが25%ということになりましたので、その時を境に、富士ゼロックスは富士写真フイルムの連結対象になったのです。富士写真フイルムには元々富士フイルムの事業がありますから、富士フイルムホールディングスという会社を作りまして、現在はその傘下に富士フイルムと富士ゼロックスという会社があるという形になっています。人材の交流や流動化は一部やっておりますが、オペレーションそのものは独立し展開しております。ですから富士フイルムは化学系の事業が強く、私どもは機械やソフトウェアが強いということです。


今は、富士フイルムの技術の力と、私どもの機械やソフトウェア方面の力を融合させて事業を行なっています。


――2000年、中国での事業権を米国ゼロックスより買って中国での販売を開始したことは素晴らしい判断だったと思います。


そうですね。そもそも富士ゼロックスとゼロックス・コーポレーションは直接販売の地域を分けていました。富士ゼロックスが直販できる範囲は、2000年までは日本とアジアパシフィックとオセアニアだけでしたが、2000年に交渉によって中国の販売権を私どもに譲渡していただきました。もともと私どもは、中国は大きなマーケットが期待でき、近いということで大いに注目していました。日本は中国とも非常に近いですし、当時からものづくりは中国に移しており、現在生産量の約8割は中国での製造です。したがって中国で作るだけでなく、製造した物を中国で販売するということは非常に意味があることだと言えます。



中国市場は09年の6月からプラス成長

――中国での販売は順調ですか?


日本の市場がすでに成熟しておりますので、08年度のリーマンショックまでは中国・アジアは2桁成長

でした。それが08年の12月から、月を追うごとに悪くなりまして、中国だけでなくオセアニアも日本もダメになり、欧米やインド・ロシアなどもすべてがダメになりました。それでも中国市場に関しては09年の6月からプラス成長に転じています。ですから、私どもは中国市場の堅調さに期待しておりますし、特に09年の下半期は、アジア全体も堅調で、オーストラリアも一旦は引っ込んだのですが、中国との関係で戻ってきています。やはり中国は他の国々を牽引しております。したがって中国・アジアパシフィック・オセアニアをテリトリーとしているということが、富士ゼロックスにとって心強いですし、非常に楽しみなマーケットで仕事をさせていただいていると考えています


――富士ゼロックス全体の中で、中国はどれほどの売り上げを占めていますか?


中国はまだこれからだと思いますが、欧米への輸出と海外売り上げの合算は総売上げの約4割となっています。これを5割まで引き上げたいと考えています。香港を含めた中国の売り上げは、当社全体の売り上げの4~5%です。これまで中国は非常にローエンドなマーケットということで、チャネルビジネスをしてきました。ですがあとになって、単に機械をたくさん売るということだけでなく、ソリューションやサービス事業に力を入れていくということになりました。そうなって本格的に中国に直販網を築いたのです。


直販というのは結構手がかかるものです。中国の優秀な人々にサービスやソリューションを教え、教育センターを作り、2001年から始めてかれこれ8、9年になっています。それが徐々に実って、私どもは大企業や国営企業などに高度なハイエンドなソリューションサービスを提供させていただいているのです。中国ではこういったグローバルサービスなども成長しているということですから、非常に楽しみにしています。



カギは「顧客となる企業の中に入り」込むこと

――販売は中国中心、技術提供は日本ということですね。


そうですね。サービスメニューやソリューションメニュー、テクノロジーといった面は日本で作りこみしますが、そういったサービスメニューをきちんと理解した上で、中国のお客様である企業の業務フローが分からないとサービスを提供できないのです。それは日本人と中国人ではやり方が違います。お客様の中に入り込んで、経営課題や「無理・ムラ・無駄」を発見する能力がないと、ソリューションサービスは提供できないのです。そういう意味においては小型の、写ればいいであるとか、ただコピーできればいいという機械であれば、機械さえ良く安く作ればいいということになり、高度な知識を持つ優秀な営業マンはいりません。インターネットなどを通して買ってくれるでしょう。直販であるということは、まずサービスメニューを日本で準備して、それを現地でどう組み立てソリューションを提案していくかということです。そういう意味で、販売は中国人などそのマーケットの方々がしっかりやらないといけないでしょう。


――直販は利益につながります。業者を通せば利益は薄くなるからです。ですが、教育や物流など問題点もあるかと思います。こういった問題はどうやって乗り越えるおつもりですか?


まず直販をするということはコストを抱え込むということになりますから、優秀な営業マンが必要です。それから、サービスも直接のサービスですから、サービス用のエンジニアも必要になります。他社と比べると相当抱え込まなければならないということはコスト的にとても負担です。ですが、私どもはBtoBです。企業にとって重要なのは、まず売り上げをどう上げていくか、そしてコストをどう下げるかです。そこのコンサルテーションを含めて大型の提案ができるという点でいい仕事ができると思っています。いわゆる、第三者に商品を売るだけのローマージンだけでなく、コンサルテーションと両刀でやっています。


もう一つの問題が、どのようにマーケティングするかということです。私どもは上海に富士ゼロックス・チャイナ・リミテッドという販売会社をつくりまして、上海のヘッドクォーターをはじめとして、28カ所の営業所網を築き上げました。そういうものを1から作ったので大変でした。上海にはプランニングやマーケティング戦略の面で、地元中国人による戦略構築を行なっています。日本人は多くありません。



しっかり教育しきちんと人材を企業に留める

――中国人には日本人ほどのサービス精神があると思いますか?


そこは郷土的な習慣だと思いますが、しっかり教育していくということが大切です。やはり中国人の方にはかなり西洋的な、ドライな面もありますが、個人の習慣と会社のプロバイドするサービスとは違います。(中国人の社員は)我々もびっくりするような商談を成立させてきますよ。言葉の問題や習慣の違いもあり、日本人では営業できないでしょう。タイやベトナムなどにも販売拠点はありますが、基本的に現地の方を採用します。工場でも直接のオペレーションは中国の方を採用しています。そうでないとなかなかコミュニケーションが取れませんから。ですが、そこまで持っていくのがやはり大変です。



――現地スタッフの教育には苦労しましたか?


教育そのものより苦労したのは、教育により成果を上げるようになった中国人社員が、これからもっといい成果を出してくれるのではないかという時に、会社をやめてしまうことです。優秀な社員を一本釣りで採用するような企業があるのです。ゼロベースから教育し育てたセールスマンが引き抜かれると、会社としてはきびしいですね。他の営業してきた人物を当社流のサービスにあった人材に変革しなければならないので。優秀な、ある一定レベル以上の営業マンは引っ張りだこでしょう。給与も高くなりますし。どこの世界も同じかもしれませんが。逆を言えば、そういう人物を富士ゼロックスに留めることができなかったというのが我々の反省する点であり、今後はこれを課題としてできるだけ育てた人材を留めるため、エンプロイー・サティスファクション(従業員満足度)をより積極的に高めていかなければなりません。


――中国で最も使われるオフィス機器のメーカーは何ですか?またその理由はどこにありますか?


ほとんど横並びの状態だと思います。我々はハイエンドの部分が強いですから、企業の中で使われるカラーやプリントオンデマンドの機械・複合機など、バリューのある中型・大型機器では我々が、知名度があるのではないかと自負しております。


――オフィス機器などは大型で配送に手間がかかります。中国での物流システムの構築で工夫している点はありますか?


中国国内の流通費はそこまで安くもありません。それに土地は広大です。まず私どもはメーカーとして参入していきました。ものづくりとして入っていった場合の流通は、まず外国に輸出しなければなりません。その時は物流網の倉庫などを港岸の近くに持つよう工夫しましたし、設計の段階で、コンテナの中にどれだけきっちり入れるかということを最初にやりました。また中国の流通網も最初はよくわかりませんでしたが、ある地点からある地点まで最短距離で効率的に運ぶにはどうすればいいかということを考えました。もう一つ大きなポイントは、私どもが一社でやるのではなく米国ゼロックスや富士フイルムと共同運搬するということです。船をチャーターした場合、協力して一緒に使うようにしています。一方、中国の内陸部において一番苦労したのは流通網の計算です。


ものづくりでも、南の深曙V周辺で作ったものを北京に運んで組み立てるなどといった場合、物流費がかかるのです。かといって部品工場を二つ確保するとなるとコストが高くなります。工場一つあたりの製造量は半分になってしましますから。そのあたりはかなり苦労しましたが、基本的に華南地区と上海地区に大きな部品を作るサプライヤーを確保しています。華南地区のみでは上海に運ぶコストがかかるので。

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インタビュアー :『月刊中国NEWS』 編集長 張一帆


『月刊中国NEWS』 10年1月号掲載

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