7月1日、中国人の個人向けの観光ビザ発給の条件が大幅に緩和。「観光立国」をテーマとしビジット・ジャパン・キャンペーンも展開する日本は、上海万博でもジャパンデーなどを利用し、中国人の訪日観光客数拡大を図っている。 そこで6月25日、観光庁を外局に持つ国土交通相の前原誠司大臣に、訪日ビザ規制緩和の今後や、日本は諸外国にどう観光客誘致を行なっていくべきかなど、「観光立国」としてのポイントを聞いた。また、観光庁でインバウンドを担当する甲斐正彰審議官にも、国際会議誘致やメディカル・ツーリズムなどその多角的な取り組みについてうかがった。
中国人向け訪日ビザ、規制は段階的に緩和
――7月1日から中国人の訪日観光ビザが拡大されますが、これによる効果をどう見込まれていますか?
最大の平和交流とは人的交流だと思っていますので、それぞれの国の国民がお互いの国をよく知るということが大事ですので、今まで所得制限や旅行の形態によって制約要因があったものを、できるだけなくしていって、中国の皆様方にも日本をよりよく知ってもらいたいと思っています。
――今後ビザ取得の制限は撤廃されると考えますか?
将来的にはその可能性もなくはないと思いますが、段階的に緩和していかないといけないでしょう。我々も受け入れ態勢を整えないといけませんから。中国語ができる人を育成し、様々な観光地にある中国語の案内板を整備したいと思っています。ホテルで中国放送が見られるということもしていきたいのです。ステップ・バイ・ステップで進めたいと思っています。 やはり日本に良い印象を持っていただきたいので、何度も行ってみたいと思っていただくために、しっかり体制を整えたいと考えています。
ビジット・ジャパン・キャンペーン成功のために
――現在、上海の空港から1週間に5万人の人が日本に来ています。そこでアンケートを行なったことがあり、そのうち99%がまた行きたいと言っています。国土交通省が主に取り組むビジット・ジャパン・キャンペーンでは、2010年までに年間1000万人の訪日を目標として掲げています。リピーターも望める環境にあると思いますが、目標は達成できそうでしょうか?
昨年の訪日が679万人で、今年5月は昨年同月比で32%増えています。中国のビザが緩和されるのは7月からですが、今年1月から5月で、中国からは昨年比で86・4%、台湾からは62・5%、韓国が71・0%伸びています。中国の伸び率は非常に高いです。シンガポール、マレーシアも高い伸び率ですが。 とはいえ、679万人からだと47%伸びないといけないのでまだまだです。7月のビザ規制緩和でどれだけ伸びるか、また10月の国慶節の連休もポイントですね。やはり中国がカギになるでしょう。 「嵐」というアイドルグループが、観光立国ナビゲーターとして活躍していますので、中国でも人気があるところで、「嵐」にもアピールをがんばってもらいたいです。 今度上海万博の日本のパビリオンでジャパン・ウィークにビジット・ジャパン・キャンペーンを行ないます。参議院選挙がありますからわかりませんが、8月下旬に中国・韓国・日本観光担当大臣会議が中国の杭州で開かれますので、その前後に上海万博へ行きたいと考えています。
どう日本を見せるか?
――前原大臣は日本の代表的な観光地の一つである京都の出身ですが、京都でオススメできるものはなんですか?
京都はすべてがオススメです。一つ一つの神社仏閣、街並み、それから古い伝統文化、そしておいしい食べ物。これらをトータルして京都の魅力なのです。
――すっぽん料理もありますね。中国人はすっぽん料理を食べるのが好きですから。
そうですか。そういうことであれば参考にしたいですね。京都には、すっぽん料理が有名な「大市」というお店があります。この「大市」で修業された方が東京で開いている「さくま」というお店もあります。
――また、中国人に人気があるものに日本の炊飯器があります。
炊飯器はだいぶ売れているそうですね。中国へ買って帰る方も多いと聞きます。
――ビジット・ジャパン・キャンペーンは2010年を一つの区切りにしていますが、来年以降はどのような展開を考えていますか?
1度にどっと来てもらえればいいという感覚でなく、徐々に中国から来る方を増やしたいと思います。先ほど99%の方がまた日本に来たいと回答したとおっしゃられましたが、それは本当にありがたいことで、環境整備を行ない、何度でも日本に来たいとおっしゃっていただけるようにしたいです。それが王道ですから。 昨年、中国から海外に行かれた方は4800万人ですね。8000万人といわれる富裕層が増えると、海外に行かれる方も増えていくでしょう。 有名な中国の女優さんに京都に来てもらって、すっぽんを食べてもらうというのもいいと思います。 また、中国向けのガイドブックがあるといいでしょう。京都・大阪などの関西、東京などの関東エリアなどに分け、これを初級コースにして、中級コースや上級コースもあるといいと思います。上級コースには、地域限定のグルメ情報や中国人が泊まって快適な、中国のテレビ放送が見られるホテルなど書いておくべきですね。
日本が持つ様々な観光資源
――国道交通省にとって観光庁はどのような位置づけですか?また、国土交通省管轄内の他部署との連携はありますか?
観光庁は、2008年10月1日に国土交通省に設置された外局で、諸外国に対して日本政府を代表する組織として対外的な発信を行っています。観光庁長官がリーダーシップを発揮することで、組織の壁を越えた政府全体での取組を行なっています。他にも、地域・国民の皆様に対して、観光に関するワンストップ的な窓口を提供するという意味合いもあります。 観光立国の実現のためには、やはり国全体、官民挙げての取組が必要ですので、国土交通省管轄内の他の部局はもちろん、省庁の壁を越えて積極的に連携しています。
――中国人観光客に知ってもらいたい日本の一番の魅力は何でしょうか?その魅力を万博以外には、中国など諸外国にどうPRしていますか?
まず、日本には四季折々で移り変わる豊かな自然があります。中国人観光客の方々には富士山や北海道の雄大な自然に人気がありますが、北海道から沖縄まで多様な自然をまず味わっていただきたいですね。 また、温泉も大きな魅力の一つです。箱根や九州といった代表的な温泉地のみならず日本各地には訪れていただきたい温泉がたくさんあります。さらに温泉観光地に欠かせないのは各地域ならではの旬の食材を使った日本食です。新鮮な海の幸、山の幸を是非堪能していただきたいと思います。 加えて、欠かせないのはショッピングの魅力でしょう。百貨店やショッピングモールなどでのお買い物は中国の方にとって大きな魅力だと思いますが、銀聯カードに対応した店舗や中国人対応が可能なお店等も今後ますます増えていくと思います。安心、安全な日本でのショッピングを是非楽しんでください。 観光庁では、こうした日本の魅力のPRを、中国をはじめとする海外現地の特性に応じて様々な形で展開しています。たとえばテレビ・雑誌・地下鉄駅や屋外ビジョンでの広告宣伝を展開したり、旅行博覧会でのジャパンブースでのPR、さらには現地旅行会社に対して多様な訪日旅行商品を造成・販売していただくための商談会の実施や招請事業等を展開しています。
――中国人に人気のある観光地としては、富士山、北海道、京都などがありますが、日本は歴史文化・リゾート・ショッピングなどどういった面を強調し観光地を開発していくべきだと考えますか。
文化という点では、日本のアニメ、マンガなどのポップカルチャーは大きな観光資源の一つであると考えています。秋葉原は家電製品とともにポップカルチャーの発信地としても有名です。中国でも特に若い世代層に人気のある日本のポップカルチャーを活かした観光地づくりが進んでいくのではないかと思います。 リゾート観光地としての日本という点では潜在的に大きな可能性を秘めています。たとえば中国人の間でも人気の高まりつつあるスキーなどのスノーリゾートや、新婚旅行の目的地としてのハネムーンリゾートとしての日本の魅力というのはまだまだ知られていないところだと思います。また、ショッピングについても、中国では日本の女性ファッション誌の人気が高いと聞いています。その他にも北海道のように、映画のロケ地として取り上げられることがきっかけとなって中国の方々にたくさんお越しいただいている地域もありますし、医療などの成長分野と連携した観光といった取組みも進んでいくでしょう。 こうした文化・ファッション・医療・スポーツといった様々な分野と観光をうまくつなげた取組みが今後ますます必要になってくると考えています。
前原誠司 (まえはら・せいじ)
現在の主な役職
国土交通大臣(平成21年9月~)
沖縄及び北方対策担当大臣
民主党京都府総支部連合会常任顧問(平成14年11月~)
民主党京都府総支部連合会第2区総支部総支部長(平成10年4月~)
主な経歴
昭和37年4月 京都市左京区に生まれる(1962年4月30日生)
昭和44年4月 京都市立修学院小学校入学
昭和50年4月 京都教育大学教育学部附属京都中学校入学
昭和53年4月 京都教育大学教育学部附属高等学校入学
昭和57年4月 京都大学法学部入学、国際政治学(高坂正堯ゼミ)を専攻
昭和62年4月 (財)松下政経塾入塾 第8期生
平成3年4月 京都府議会議員選挙(左京区選出)において28歳で初当選
平成5年7月 第40回衆議院議員総選挙において初当選(旧京都1区選出)
平成21年8月 第45回衆議院議員総選挙において6期目の当選(京都2区選出)
インタビュアー:『月刊中国NEWS』 編集長 張一帆
『月刊中国NEWS』 10年09月号掲載
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