カネボウ化粧品は今年5月、中国での新たな現地生産商品「AQUA LUNASH(アクア ルナッシュ)」をこの秋発売し化粧品専門店の流通に本格参入することを発表した。化粧品業界において中国市場はまだまだ拡大を続ける注目市場だ。現地生産ブランドを持つカネボウ化粧品は、どのようにシェア拡大を狙うのか、植松正社長に話を聞いた。
東日本大震災に対する認識と過去の震災から活かされた教訓
――今回の東日本大震災によって生産に問題は生じましたか?
生産に大きな問題は生じていません。ほぼ予定通りです。節電の影響もありますので、前倒しして生産するなど、お客様への影響も極小化するように努力しています。
――今中国にはよく行かれますか?
この役職についてからは、中国と日本を行ったり来たりしています。自分たちのオフィスはもちろんのこと、ビジネスにおける行政との関係がありますので、それに関係する方々へのごあいさつにうかがうことも多いです。北京・上海を中心に行き来しています。今年の5月には、上海で「第16 回中国美容博覧会(チャイナ・ビューティー・エキスポ)」が開かれ、私も行きました。
新たに展開を強化しているブランドとして展示を行なった「ブランシール スペリア」シリーズの中心商品「ホワイトニングコンクルージョン」が出展された数々の賞品の中から、特に優れた賞品に贈られる「美伊金賞」を受賞させていただいています。
――上海と北京によく行かれるということなのでお聞きしますが、中国の北と南では化粧の仕方が違うとよくいわれます。その点はどのように考えていますか?
確かに気候や身長の差・民族性の差などにより多少は違うと聞いていますが、化粧の仕方そのものに大きな違いはないと思っています。ただ、北のほうは乾燥していますから、北と南でスキンケアの方法は変わってくるでしょう。とはいえ、販売する場合はどの地方がどうというよりは、まずブランドを立ち上げてカネボウの認知度を上げることが重要です。
ファッションに敏感な上海人
――中国の北と南ではどちらのほうが販売成績が良いですか?
それは南側です。ですが、大きな都市は拮抗していますから、そういった大都市を中心に重点市場を選定して展開することで、効率的な販売を行なっています。ファッション性などを比べると北京の人より上海の人のほうが敏感だと感じます。一番売上が高い都市も上海ですが、市場も沿岸部からだんだんと内陸部へと拡大していますから、お客様の動きに合わせて戦略を練っています。
――この10年間、中国での売上の伸びはどうですか?
毎年、店頭ベースで1年2~3割は伸びています。とはいえまだ分母が小さいので、これからが正念場でしょう。2年ほど前、我々は当時、北京オリンピックと上海万博が終わっても中国経済の発展は止まらないと予測していました。それは日本で言うところの新幹線が中国で発達しており、北はハルビンから南は香港、西は西安まで縦横無尽に張り巡らされ、人やものの流れが頻繁になっているからです。すでに時速300キロ以上で走行する新幹線の敷設距離は3500キロ以上に達し、日本の新幹線の長さを超えています。
私は上海から南京まで中国版の新幹線に乗りましたが、最短73分だそうです。さすがに速いですね。また、上海の浦東国際空港からリニアモーターカーに乗り、驚きました。最高時速430キロということでとても速いですが、中にいるだけではわかりません。外を見てはじめてその速度が実感できました。我々のビジネスもまたリニアモーターカー並みの速さで行ければと思っています(笑)。
――中国市場には世界各国から化粧品会社が進出してきています。競争は激しいと思いますが、この状況をどう見ていますか?
確かに厳しいですが、安全安心という品質重視の姿勢で進めば、大いにチャンスはあると考えています。化粧品を購入する中国の方々の本物志向はとても強いですから、そういったお客様には特に理解していただけるはずです。
中国の人々は日本の市場をよく見ているので、日本でのヒット商品は中国でも人気が高いです。代表的なのは、「ブランシール」や「KATE(ケイト)」というシリーズで、特に「KATE」シリーズは、上海来福士(ライフーシ)にあるワトソンズの店舗で発売初月度1000万円以上の売上を記録しました。日本の国内店舗と比較しても、非常に高い売上といえます。「KATE」シリーズは中国進出以前から、ネームバリューがありましたので、中国のお客様にも支持されたのでしょう。
中国で販売している商品には、百貨店中心のブランドである「Impress(インプレス)」と「LUNASOL(ルナソル)」、漢方なども取り扱う高級薬局を中心に流通する「フリープラス」とワトソンズで展開する「KATE」があります。その他、上海工場で生産する中国専用ブランドである「AQUA SPRINA(アクア スプリナ)」などもあります。
――中国では、安すぎても売れない部分があるかと思いますが、価格設定はどうなっていますか?
販売流通や消費者ターゲットによって価格帯を分けています。若干高めのシリーズから中間くらいまでのシリーズがあります。中国にはいろいろなお客様がいらっしゃいますから、あらゆる商品の中から自分に合ったものを選んでいただければと思います。
インタビュアー:『月刊中国NEWS』 編集長 張一帆
『月刊中国NEWS』 11年10月号掲載
Comentarios